2007年6月28日木曜日

会社とパソコン

ITバブル崩壊後の日本経済のどん底のころ、金融界のある会社のコンサルティングの仕事をしていました。かなりきびしい業績の中で、思い切った改革を計画し、進めようとしていました。
ある会議で、「わが社の人材にこれから必要な技能はなんですか?」と問われ、「パソコンのリテラシー(パソコンを使いこなす能力)です」と答えました。顧客の資産運用をプロとして助言する会社において、テクノロジーを活用しきることが当然と考えたのです。しかし、会議後にこの質問者が激怒していると聞かされました。私の回答が、あまりにも当たり前に思えたのでしょうか。メールを見るとか、その程度のことは誰でもやっている、ということでしょう。会社から提供される情報を加工し、プレゼンテーションする、といった能力を社員に求めることに気が回っていないのかも知れません。

これは一例ですが、企業社会でパソコンは「自分の能力を拡大するツール」というよりも、「管理される道具」という位置づけになっているように思います。これは不幸なことです。Appleは、パソコンを世に送り出すときに、Computers for the rest of us という標語をかかげました。これは、1980年代当時、パソコンは高度な技術知識をもつ一部の人の道具であったのですが、それを誰もが自分をEnhanceする(能力を高める)ツールとして変身させたい、という宣言だったのです。
約20年が経って、どうでしょうか。企業社会では、洪水のような伝達メール、内部統制のための記録の仕組みなどがパソコンに載せられ、パソコンに向かってそれらを処理することが仕事になっています。

人間本来の創造性を増幅させてくれる友だち。パソコンもそうなりたいと思っていることでしょう。