2007年9月4日火曜日

不撓不屈

「不撓不屈」(高杉良 著、新潮社 刊)を読みました。
私が生まれる前の「飯塚事件」について、お恥ずかしながらはじめて知りました。
また、昨年に映画化されていることもやっと知った次第です。

自分の住む栃木県に、飯塚毅氏のような偉人がいたとは・・・。
禅で見性を許され、世界の税法や会計実務に精通し、英語とドイツ語を自由に操り、TKC(東証一部上場企業)を創業。
信念を貫き、言うべきことを言い、権力の理不尽にも屈しなかった。
彼を応援して国会で国税庁長官を追求した渡辺美智男氏(当時代議士1年生)の弁舌もたいしたものです。ミッチーがこのような活躍をしていたということも初めて知りました。

平成4年に同氏が国会で意見陳述している姿をビデオで見ることもできます。
http://dr.takeshi-iizuka.jp/proposal/media/movie-07.html
大蔵官僚にチクリとやるどころか、ズケズケと法案の欠陥を指摘するあたり、彼の生き様・信念を垣間見ることができます。

飯塚事件の象徴は、メンツやプライドにこだわる高級官僚の暴走と無責任さです。40年以上がたった今、官僚主義の負の面はどれだけ正されたでしょうか?ちょっと暗い気持ちになります。

もっとも感動したのは、暴走の主導者である安井誠関東信越国税局直税部長(当時)に対して、損害賠償・名誉毀損等の訴訟を起こさなかったことです。飯塚氏の師である植木義雄(ぎゆう)老師の禅語「鑊湯無冷處(かくとうにれいしょなし)」(煮えたぎったお湯は冷やしようがない)に従って、訴訟を起こさなかったようです。「許すことほど完璧な復讐はない。」(Josh Billings)という言葉を思い出します。
安井氏は、その後大蔵省では証券局長にまで上り詰め、後にいくつかの生命保険会社などに天下りました。高級官僚として、絵にかいたような成功・勝ち組みでしょう。一方で、未来永劫、彼の事件での活躍(?)ぶりは記録として残ります。

個人の力の底知れなさをあらためて実感させて下さった飯塚毅さん、そしてこのような歴史上の重大事件と偉人の生き様を小説として残して下さった高杉良さん、ありがとうございました。